シロアリは住宅に大きな被害をもたらす害虫として知られています。この昆虫は木材を食べる習性があり、早期に発見しなければ、建物の構造に深刻な影響を与えるのです。とくに進行が進むと家全体の耐久性が低下し、倒壊のリスクすらともなうこともあります。
そこで今回は、シロアリの基本知識、そして効果的な駆除・予防方法について詳しく解説します。大切な住まいをシロアリから守るための第一歩を踏み出しましょう。
シロアリの基本知識
シロアリという名前から「白いアリ」を連想する方も多いですが、実際には種類によっては羽アリの段階で黒くなるものもあり、分類上はアリではなくゴキブリの仲間です。この意外な事実を知らない方は少なくありません。
シロアリは社会性昆虫であり、ひとつの巣には数万から数百万匹もの個体が暮らしています。一匹あたりの食害能力は小さくても、その数が膨大であるため、被害は甚大になります。
中には、黒い羽アリに見えるものもおり、一般的なクロアリとの区別が難しい場合も多々あります。そのため、気づかないうちに被害が進行し、発見時には大規模な修繕が必要になるケースも少なくありません。
シロアリの生態を理解することは、早期発見と対策に欠かせません。シロアリはゴキブリ目シロアリ科に分類され、ひとつのコロニーには王と女王が存在します。
女王は産卵を担い、そのほかの個体は主に働きアリや兵アリとして役割を果たします。働きアリは巣作りや餌の収集、幼虫の世話を担当し、兵アリは外敵から巣を守る役目を負っています。
主なシロアリの種類
日本には約22種類のシロアリが生息していますが、とくに住宅に被害をおよぼすのはヤマトシロアリ、イエシロアリ、そして外来種のアメリカカンザイシロアリの3種類です。
ヤマトシロアリ
ヤマトシロアリは日本全土に分布しており、体長は7~10mmです。湿った木材を好む性質があり、とくに浴室や台所の床下など水回りに生息することが多いです。
体が乾燥に弱いため、湿気が多い場所での被害が中心です。ほかのシロアリにくらべ、寒さに弱いことも特徴です。木材だけでなく湿った畳や段ボールも好みます。
イエシロアリ
イエシロアリは主に温暖な太平洋沿岸地域に生息し、体長は12~16mmとやや大きめです。ヤマトシロアリに比べて乾燥に強く、新しい木材を好む傾向があります。
この種類はコロニーの規模が非常に大きく、被害の進行が速いため、とくに注意が必要です。水分を運ぶための蟻道が長いことでも知られており、乾燥している場所でも油断してはいけません。
アメリカカンザイシロアリ
この外来種は乾燥した木材を好むため、従来のシロアリ対策が通用しにくい場合があります。コロニーは比較的小さいものの、建物内に複数存在することがあり、駆除が困難です。
ひとつの巣に生息する個体数は少なめですが、1個体ずつの体長が大きいことでも知られています。
シロアリとクロアリの違い
シロアリとクロアリは見た目が似ているため、混同されることがよくあります。しかし、これらはまったく異なる昆虫です。クロアリはハチ目に属し、主に食材を狙う雑食性ですが、シロアリはゴキブリ目に属し、木材が主な餌です。
見た目の違いとしては、シロアリの触角が数珠状で胴体が寸胴、羽が4枚ともほぼ同じ大きさであるのに対し、クロアリの触角はL字型、胴体にはくびれがあり、後ろの羽が前の羽より小さいという特徴があります。
シロアリ被害の活動時期と兆候
虫といえば、夏が活動時期だと考える人は多いのではないでしょうか。実はシロアリの活動時期は、種類によって異なります。専門業者でない一般人では、シロアリの見分けはつきにくいものです。どの種類かは発生した時期を参考にしてみるとよいでしょう。
ヤマトシロアリは4月から5月に、イエシロアリは6月と7月、アメリカカンザイシロアリは7月から10月にかけてがおもな活動時期とされています。
シロアリには繁殖期がなく、女王は季節を通して巣のなかで産卵をしつづけています。そのため、上記の活動時期と該当しない11月から3月の期間は安心できるというわけではありません。
これらの活動時期は、厳密には羽アリが発生しやすい時期を指します。シロアリはコロニーが成熟し、アリの個体数が増えすぎると、羽アリが巣を飛び立ち、新たな巣を作ります。
また、羽アリが飛び立ったことは、巣が空になったことを意味しません。むしろ羽アリは繁殖行動が活発であることを示すため、近くに巣がある可能性が高いです。羽アリの飛び立ちは新しい被害の始まりを意味しますので、周囲の人のためにも注意が必要です。
ほかに、シロアリの被害を早期に発見するためには、次のような兆候に注意することが大切です。
蟻道(ぎどう)とは、シロアリが移動する際に作る土の通路のことを指します。とくに床下や壁の隙間、水回りのような湿気やすい場所にできやすいので注目しましょう。
また、床がきしんだり、壁や柱を叩いてみたときに空洞音がしたりしたときも注意しなければいけません。ご存知の通り、シロアリは家屋の木材をかじります。木材が内部から食害され、中身がなくなってしまうのです。
シロアリの対策方法
シロアリがいることが発覚したら、以下の方法で進めましょう。シロアリ対策には、市販の薬剤を使用する方法と専門業者に依頼する方法があります。
市販薬剤を使用する
シロアリによる被害が初期段階であれば、市販の液剤やベイト剤を使用することで、ある程度の効果を期待できます。
液剤を使用する場合は、被害箇所だけでなく、木材の周辺部分もふくめて散布しましょう。ベイト剤は、家屋を囲むように設置する必要があります。
ただし、この方法はあまりおすすめではありません。シロアリは人目につきにくい場所に潜んでいることが多いのです。完全で確実な駆除を実現したい場合は、専門業者に依頼したほうがよいでしょう。
専門業者への依頼
確実な駆除を目指すなら、専門業者に依頼するのがおすすめです。業者は被害状況やシロアリの種類に応じて最適な方法を選び、専門機材を使って効率的に駆除を行います。
シロアリの駆除は基本的に、木部の処理と土壌に薬剤を散布する処理やシロアリにとって有害なベイト剤を摂食させるベイト工法などを行います。
また、シロアリを処理した後の処理も重要です。家屋をシロアリが好まない環境にすることで、再び発生することを防ぐことができるのです。
シロアリが好むのは、キノコ類が発生しやすいような、ジメジメして暗く、養分が豊富な場所です。専門業者は、この条件がそろった箇所に防蟻処理と木材の防腐処理を施すのです。
依頼する場合は、事前にしっかりした説明を行う業者を選びましょう。親身にアフターフォローを行う業者の場合、施工後の保証が付く場合が多いため、安心感が得られます。
選定する時には事前説明や見積もり内容をよく確認し、じっくり検討しましょう。
まとめ
本記事では、シロアリ被害を防ぐための基礎知識について解説しました。シロアリは畳や段ボールなどもふくむ木材と、湿気の多い箇所に繁殖しやすいことがわかりました。完全に駆除し、予防措置もとったからといって安心してはいけません。再び発生しないように、定期的な対策を行うことが重要です。シロアリ被害を防ぐには、普段から湿気対策を行い、定期的な点検を実施することが重要です。とくに築年数が経過した建物や湿気が溜まりやすい家屋では、注意が必要です。専門業者による点検を定期的に受けることで、被害を未然に防ぎ、大切な住まいを守ることができます。シロアリ対策は、早期発見と迅速な対応が鍵です。適切な知識を身につけて、被害を最小限に抑えましょう。